True LOVE
教室は四階だったから、階段を一個上がるだけだった。
そして鉄の扉を開く。
見えた世界には、数人の女子グループが端っこで大きな声で笑いながら昼ごはんを食べている。
そしてもう少し詮索すれば一人の女の子が、フェンスにもたれかかって空を見上げていた。
その女子グループからの視線があったが、もちろん気にはしない。
一人の、空を見上げる女の子のもとへ歩いていった。
「おい、陽塚由紀」
おれが名前を呼ぶと、おれを見た。そして下を向いて帰っていこうとする。
「ちょっ、待てって」
白い細い腕を掴んだ。
その時、なぜか心が動いた。
初めて腕を掴んだわけではないのに、なぜか胸がくすぐったくなった。
「離してよ」
「無理」
「あんたが決める事じゃないでしょ?痛いから…ねぇ」
「無理だって。おれの話を聞け」
「ちょ…意味わかんないよ」
「無理矢理引っ張ると腕抜けんぞ」
「あんたが…離さないからでしょ……」
「だからおれの話を聞けって」
「聞くから無理矢理引っ張らないで」
陽塚由紀は抵抗を止めた。
だけど、腕は離せなかった。離したくなかった。