おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
ずっと前はデパートのトイレで線よ出ないでー出ないでーって願っていたな。

過去のしょっぱい記憶を恥じながら、仕事から帰ってきた私は検査薬を手にトイレに閉じ籠る。


生理が来るはずの日は明日。
検査薬の最適な使用時期は予定日から1週間後。
つまりフライングの検査ということになる。


今の妊娠検査薬は改良されて予定日の前でも色は薄いながらも十分に反応してくれるらしい。



まぁ、使い方も確認したいし試しにってことで。

線が出ない…つまり陰性だった時の自分への言い訳を考えながら検査をはじめた。



フワ~


検査薬の窓に染みていく様をトイレの便器に座ったままじ~っと見つめる私。


ピンク色に染まった線がでるはずの窓を凝視していると、目の錯覚を起こした気分になる。


確認線である濃い線はすぐに出ていたが、隣に見えるはずの判定線は出てこな………


「ん?」


見間違いだよね
なんとなーく色がついているような…?



「んん??」


下げたままだったパンツも適当に腰まで上げ、検査薬から目を離さないまま明るい窓際まで移動する。





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