おかあさんになりたい。 ～天使がくれたタカラモノ～

「線が……………出てる……………」


誰もいないダイニングの椅子にストンと腰を下ろす。



時が止まる。

それが一番あの時の感情に近い。



何年も前に見たくないと願ったそのピンクの線は
今になって180度反対になったの密かな願いに応えてくれてる。



「妊娠……………したんだぁ………？」



麻痺していた感情が、たった今目を覚ましたように身体中に巡る。



「………………わぁ……」


一人言なんて初めて言ったかもしれない。


言葉とも歓声とも言えない声をあげた後、私の顔は自然と笑顔になっていた。



あったかい…


あの時めぐった感情は初めて感じた母性かもしれない。
たくさんの教え子たちではなく、たった一人のわが子に感じた母性。


まだまだ小さくて目にも見えないだろう命を感じるように恐る恐る自分のお腹に手を当てた。


まだ子宮がお腹のどこにあるかはわからなかった私が手を当てたのは胃の辺りだったかもしれない。



でも、伝わったよね？


「ようこそ。私の赤ちゃん。」


って精一杯の歓迎のキモチ。