おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
夏祭りの帰り道。



賑やかで明るかった祭りが急に静かになり物寂しくなる。

「本日はまことにありがとうございました。また来年も………」

片付けの始まった会場に町内会長さんの言葉が寂しげに響く。

一緒の場所で同じように楽しんでいた人々がそれぞれの家を目指して帰路につく。




もの悲しい、切ないこの雰囲気は懐かしい。




ザリザリザリ……



サンダルの音が夜道に鳴る。



買ってはみたものの食べ切れなかったフランクフルトを手に持ってお母さんを振り返る。



「大丈夫なの?疲れてない?」

「うん。」



こんな風に、私がお腹にいた時も心配してくれたんだろうな。



「私って安産だった?お母さんはつわりあった?」


今まで聞いたことなかった。
私が産まれる前のこと。


……というか、お母さんと自分のことについて話したことって記憶を辿ってもあんまり思い出せない。



私は長女だから。

意識はしてなくても無意識に責任感とかが刻み込まれてる。
自分のことより小さい子の面倒を見なきゃって。



お母さんと一緒に話すのは妹や弟を心配して「まったく大丈夫かな。」ってことばっかり。
今までまったくそれに疑問も感じなかった。




「麻那の時は野菜ばっかり食べてたよ。
つわりで牛乳が飲めなかったから、だからか小さい時は麻那は牛乳嫌がってね…」


「ふ~ん。今も牛乳好きじゃないかも。」


「産まれたのは夜中だったなぁ。早かったよ、産まれるの。」



「産むの…痛いんでしょ?」


当たり前だけど、やっぱり聞きたい。
産むのは相当大変なのに。
なんでみんなすぐにまた産みたいと思えるのか。
3人立て続けに産んだお母さんに聞いてみたかった。




「痛いけどそんなの大丈夫だよ。」

お母さんは笑った。



「赤ちゃんが出たい~って言ってるのにお母さんが痛い痛い言ってられないでしょ。」


私を安心させたいからか、自分のことを思い出してるのか。
お母さんは笑いながらそう言った。






強いな。



お母さんはちゃんとお母さんだ。

普段はちょっと抜けてるとこもある可愛いお母さんだけど、ちゃんとお母さんだ。






私もなりたい。



そのお母さんの話に私の心に炎が灯った気がしたんだよ。




わたしも。
「おかあさんになりたい。」
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