三行ラブレター



「おかえり」

「ただいま」


家族になって1カ月が経とうとしていた。


最初の頃よりも本来の夏樹の姿を見せてくれるようになった。

戸惑いのない「おかえり」と言う言葉に心は段々落ち着いていく。
当たり前の事なのに当たり前とは思えなくて、ただ自分自身の心を落ち着かせるのに精いっぱいで。



「テストどうだった?」

「言える訳ないだろ?」

「教えてよ、家族でしょ」

「だめだめ。この後まだ採点あるから」


軽く手を振って追い返せば眉をしかめる夏樹の姿を捉え「ケチ!」と言う叫び声が聞こえた。
そんな妹に小さく笑えば「ケチで結構」と冷静さを装って言い放つ。

まだまだ未発達で、未熟な、世間を知らない義理の妹。


そう、僕はそんな妹が可愛くて仕方がない。
ただ、それだけのことなんだ。

それだけの、こと。

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