少年陰陽師 奥州平泉奇譚

インターバル3

その昔。

津山の松平氏が鬼を切る刀を所蔵していたらしいんだ。



源頼光が、大江山に棲んでいた酒呑童子を退治した時に用いた名刀だって。



名を何と言ったか……忘れちゃったけど。




鬼は元来、人の心に宿るもの。



『人が恐ろしいと思うのは鬼だけれど、目に見えないとなると、それは鬼という名前だけ。

実に恐ろしいのは、ただ人である』。



これは密教の阿闍梨(高徳の僧)が言った言葉。




この世に生きる全ての人は、心に陽と陰を容しているっていうよ。


光と影、表と裏。




それらが均衡を保ち、人という個を形成しているっていう考え方。


だけどさ……。

その均衡が破られれば、恨みや憎しみ妬み嫉み、そういった心の陰が人を鬼へと変えるそうだよ。


阿闍梨が言うには、「人の心に巣食う鬼を斬ることができるのは、人の心の刀に他ならない」らしい。




人の心だけが、その陰を見抜き照らすことができるんだって。



なるほど……って、思わない!?




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