レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 その間にロイはせっせと背中のボタンを外して、衣服をゆるめている。
「レディ・エリザベス! どうしたのですか? ここを開けてください!」
 エリザベスがすべてのメモを書き写し、財布にしまったところで扉が叩かれる。ロイは元の通りにソファに横たわり、エリザベスは彼の手に財布を握らせた。
 側に用意されていた毛布をかぶせ、扉を開ける。

「申し訳ありません――服を緩めている間に殿方に入られるのは嫌だと彼女が言ったので」
 詫びながら、エリザベスは公爵を部屋の中に招き入れる。公爵の後ろには、水のグラスをトレイに乗せたダスティがついていた。
「まあ、ダスティ。あなたが来るなんてどうしたの?」
「君の友達が倒れたって聞いたから」
「たいした話じゃないのよ――コルセットを締めすぎてしまったの。わたしが注意しなかったのがいけなかったのね」
「ああ、女性にはありがちだね」

 気分が悪いふりをしているロイは、公爵からグラスを受け取り、水を飲んでいる。
「もう帰った方がいいかもしれないわね」
 その様子を眺めながら、エリザベスは言った。本来の目的はもう達成したのだ。リチャードには申し訳ないが、この場に留まる必要はない。
 リチャードとは、今度また改めて時間を作ることにしよう。
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