レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
本当に危険な人は
 さて、無事に作戦が終了した以上、エリザベスがここに残っている理由もない。怪しまれずに、パーティー会場を抜け出す算段をしなければ。
「公爵、ありがとうございました。おかげで、パーティー会場で醜態をさらさずにすみましたわ」
「お役に立ててよかった」
 エリザベスがにこりとすると、公爵は胸に手を当てて優雅に一礼して見せた。
 
「アルマ――、あなたもお礼を」
 さすがの貫禄だと感心しながら、エリザベスはロイを促す。しっかり躾けられたロイは、少女らしい仕草を忘れずに、少しだけ身体を起こした。
「……ありがとう……ございました」
 毛布で顔を隠しながらの彼の言葉に、公爵は再び一礼してみせる。それから、彼は、パーティー会場になっている広間へと戻っていった。
 
「ダスティ、どうかした? あなたもパーティーに戻ればいいのに」
 この部屋に残っている必要はないというのに、ダスティはまだ部屋にいる。エリザベスの言葉に、彼は肩をすくめた。
「人手がいるんじゃないかと思って」
「ありがとう。でも、もう帰るから大丈夫よ――この子、具合が悪そうだもの」
「じゃあ、車で送ってあげるよ。君、ここまで自分の車で来たわけじゃないだろ。俺、自分で運転して来ているからすぐに出してあげられるし」
 たしかにこの屋敷までは、リチャードの車に乗せてもらってきた。帰る時も、彼の車を借りるつもりでいたけれど、探しに行くよりは、ダスティの車に乗せてもらったほうがたしかにはやい。
 
 それに、憧れの俳優と一緒にいることができるいい口実でもあった。彼の車に乗るなんて、機会を逃す手はない。
< 154 / 251 >

この作品をシェア

pagetop