レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「ねえ、ダスティ。あなたずいぶん詳しいのね? どうしてそんなことまで知っているの?」
「僕も会員だからさ――キマイラ研究会の。だから、知ってる。オルランド公爵は危険だ。近づいちゃいけない。近づいたら、今度は確実に消されることになる」
 消される。
 その言葉は胸に鋭く突き刺さった――ダスティの車に細工をされていたことを知った今は、なおさら深く。
 
 だって、ダスティがエリザベスを送ってくれることになったのは、本当に偶然だった。あのわずかな間に、彼の車に細工――細工そのものにはさほど時間はかからなかったとしても――をするなんて。
 公爵自身が細工をしたとは思えないから、あのわずかな時間に彼の命令を実行に移す人物がいたということになる。
 
「……最近、聖骨の盗難が続いているのはキマイラ研究会が関係しているの?」
 ダスティはあっさりと認めた。
「たぶんね。鉛から金を作り出すことに成功した――と聞いているよ。僕は下っ端だから詳しいことは聞いていないけどね」
「下っ端?」
「そう――僕は下っ端なんだ。あいにくとあそこも階級制でね。僕みたいな育ちの者は一番下から始めないといけないんだ。教育もないし」

「教育って大切なの?」
「大切だよ。教育と言うより、知識かな。昔の文献を読みとくのはそれなりの知識が必要だからね。勉強する時間なんてないから下っ端でいるのもしかたのないことさ」
「では、なぜあなたはキマイラ研究会にいるの?」
 それなら、なぜ、彼はそんなところに所属しているのだろう。エリザベスの問いに答えるべく口を開きかけたダスティだったけれど、目を閉じてしまった。
< 167 / 251 >

この作品をシェア

pagetop