レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難

 それから後は、ひたすらレディ・メアリのお小言をおとなしく聞いていたエリザベスは、帰りの車の中でこぼした。
「ダスティと会うなだなんてあんまりだわ。彼は悪くないのに」
「レディ・メアリのおっしゃるとおりですよ、お嬢様」
 パーカーはやんわりとエリザベスとたしなめた。
「事故の件を新聞に載せないようにするだけで大変だったのですから」
「……わかってるけど」
 エリザベスは唇を噛みしめる。
 
 パーカーが、事故をもみけすのにどれだけ苦労したことか、エリザベスだってわかっている。パーカーが胃のあたりに手をやるのを横目で眺め、もう一度エリザベスはため息をついた。
「とにかく、です。お嬢様」
 パーカーは厳しい口調で言い渡した。
「レディ・メアリのお言葉に従っていただきます。ダスティ・グレンとの個人的なお付き合いはお控えください」

 無言でむくれたエリザベスは、車の窓に頭をもたせかけた。パーカーは意地悪だ。ダスティは悪くないのに。
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