レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「あの建物でございますがね、お嬢様」

 女性秘書にお小遣いを渡して、昼食に出かけさせてからアンドレアスは口を開いた。

「何か特殊な事情でも?」
「巧妙に隠されてはいますが、持ち主はオルランド公爵でございます」
「あんな場所に?」
 
 エリザベスの眉がよる。

 公爵ともあろう人が不動産を所有するには、正直、いやだいぶいかがわしい場所のように思われた。少なくとも、エリザベスなら足を踏み入れるのをためらうが——男性は違うのだろうか。

「前の持ち主から借金のかたに取り上げた土地に建てたようですよ。まさかオルランド公爵ともあろうお方がお金を貸すような商売をしているとは思いませんでしたよ」

 エリザベスの手元のナイフとフォークが耳障りな音を立てた。

「お金を貸すような仕事?」
「ええ」

 アンドレアスはすました顔で、調査結果がまとめられているらしい紙の束をめくる。
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