レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスの家から盗まれた彫像が二体、並べられている。その横はガラス製の棚だった。

「私の時計!」

 エリザベスは懐中時計を手に取った。それをポケットに滑り込ませる。これさえ手に入れば、もうここに用はない。

「思っていたより早いお着きですね」

 エリザベスが扉から出ようとした時、反対側の扉から複数の人間が入ってくる物音がした。

 舌打ちしてエリザベスは扉の陰に身を潜める。

「待ちきれなかったから。頼みを聞いてくれてありがとう。これで堂々とあの人に求婚できるよ——やはり、大学で教える給料だけでは不安だから」

 リチャードの言葉がエリザベスの胸に突き刺さった。そんなこと、気にしなくてもいいと言ったのに。

「そうですね、やはり財産の差は大きいでしょう」
「彼女は素敵な人だから——彼女にふさわしい相手でありたいと思うよ」

 入ってきたのは、リチャードと頭巾のようなものをかぶった男だった。

「あなただからですよ。特別です」

 頭巾の男が、頭巾の中で笑ったような気配がする。エリザベスには、あまりいい笑いのようには感じられなかった。どこかリチャードを嘲っているような。

 扉の陰で、エリザベスは拳を握りしめた。
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