レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 それに茶葉。エルネシア本土でも育てられているが、ラティーマ大陸の高山地帯で育てられる茶葉は特に香りがいい。

 そして、宝石類。金だけではく、ダイヤモンドやサファイヤやエメラルドなどの宝石が大陸では算出されるのだが、その取引も手がけている。

 逆にエルネシア本土から大陸へは、家具や仕立てられる前の服地、装身具に加工された宝石類を輸出している。

 三年でマクマリー商会は莫大な利益をあげ、その後父親が死亡した時、エリザベスは後を継ぐことに何のためらいも感じなかった。

 商売を始めた時から父の側にいたのだ。父の尻をたたいて仕事をしているうちに、エリザベスも商売の基礎は身につけていた。淑女たるもの商売などに手を出してはいけないという理屈もわかるのだが、だからといってやめようと思わない。

「私に結婚を申し込もうだなんて、周囲の評判を気にしない人なのかしらね」

 マギーに寝支度を手伝わせたエリザベスは、天蓋付きの立派なベッドに寝転がった。羽布団がふわふわして気持ちいい。

「レディ・メアリにお声をかけられたら断れないんじゃないですか?」

 と入浴をすませた後のタオルを片づけながらマギーが笑う。たしかに、社交界におけるレディ・メアリの影響力はあなどることができないのもわかるけれど。
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