レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
―閑話 ― ある執事の受難その2
 エリザベスが留守にしている間、パーカーはパーカーでやらなければならないことがいくつもあった。
 主が留守にしているからといって、屋敷の手入れをおこたるわけにはいかないのだ。
 強盗が押し入った時に破られた屋根裏の窓はきちんと修理され、再び保管庫として使用できるように整理された。

「……マギーもいないとなると静かですねぇ」
 新聞を読みながら、パーカーはコーヒーを嗜んでいた。彼は酒も煙草も嗜まないので、コーヒーだけが唯一の悪癖なのだ――胃薬をのぞけば、であるが。
 その胃薬も、主がいないとなれば出番は格段に少なくなる。おかげで、ここ数日というもの食事がおいしくてしかたがない。

「パーカーさん、車の手入れ終わりましたよっ」
「トムに点検してもらったのかな? 私の確認の前にトムに確認してもらわないと……」
「はーい」
 いつぞやエリザベスが拾ってきた少年は、すっかり屋敷にいついてしまった。パーカーはずいぶん反対したのだが、彼よりだいぶ年下のうら若い女性とはいえ、雇い主に逆らえるはずもないのだ。

 ――レディ・メアリが彼に期待している役割は、もっとエリザベスに対して口やかましく振る舞うことであるのも十分承知してはいるのだが。
「……いたた……ふぅ」
 何だか、胃が痛いような気がしてきた。胸のポケットに入れた錠剤の瓶にパーカーの手が伸びる。
 これを飲めば楽になれるのはわかっているのだが――あまり薬に頼るのもどうかと思うと、痛みをこらえて手を戻してしまう。
 どうせ、主が戻ってきたら嫌と言うほど、薬を飲まなければならない羽目に陥るのは目に見えているのだから。

< 78 / 251 >

この作品をシェア

pagetop