レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「素敵! 嬉しいわ。ダスティ・グレンには一度会ってみたかったの。素敵な俳優さんよね。この舞台には出演していないけれど」
「お嬢様!」
 低い声でたしなめたパーカーの方は見向きもせず、エリザベスは手を叩いた。
「最近ミニーが贔屓にしているようですね。なかなかの好青年ですよ」
 ヴェイリーがそう言ったとたんに、エリザベスは頬を膨らませる。

「知っているわ。新聞に熱愛って書いてあったもの」
「……ゴシップ紙ですな」
「お嬢様、このような男性の家に出入りするなど……」
「なかなか率直な物言いをするね、パーカー君」
「申し訳――」
 思わずエリザベスの肘を掴んだパーカーの言葉を、ヴェイリーは遮った。

「かまわないよ。そちらのレディは私のことを犯罪組織の親玉とまで言ってのけたからね」
 それから穏やかな微笑みを、人の悪そうなものへと変化させて彼は続ける。

「私は、喜んでレディと君を屋敷に招待するよ――ただし、屋敷に入る時には、レディがスカートの下に入れている物騒なものは預からせてもらうがね」
「あら」
 エリザベスは目を丸くして、驚いたような表情を作った。ちょっとやそっとじゃばれないと思っていたのに、どうして気づかれたのだろう。

「あなたどうしてわかったの? 入口の男性には気づかれなかったのに」
「私もラティーマ大陸で過ごしたことがありますのでね」
「……なるほどね。ああ、パーカー、あなたはよくわかっていないみたいだけど、ラティーマ大陸じゃ女性が銃を持つのは珍しい話じゃないのよ」
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