神様のおもちゃ箱


―――あんな物のために、あんな苦労したのか…。



俺はチョコボールを元の位置に戻し、

やっぱりまた手に取って、ガムと一緒にレジへと持っていった。


あの後……

由紀子さんはあのエンゼルマークをハガキに糊付けして、ポストに入れたんだろう。

俺はその姿を見届けていない。


なぜなら、一気にアホらしくなり、

振り回された自分が馬鹿みたいに思えてきて。


感じ悪かったと思うけど、先に「失礼します」と郵便局を出てきてしまったのだ。


小学生じゃないんだぞ。

何でそんなものに夢中になるんだよ。


話をきくと、由紀子さんは懸賞マニアだった。

あたりくじや、福引も大好きだそうで。


井伏も井伏だ。

別れのセンベツのつもりかよ?


あの風貌の男がちまちま当たりくじ探し回って集めてる所なんて、想像つかない。

イメージが湧かない。

猛々しい「井伏」はそんなことしちゃだめだろう。

イメージががた崩れだ。


ますます、何者なんだ!あの男!

マジでとんだ事に巻き込まれた。



――でもま、連絡先を教えたわけじゃない。

  もう会う事もないだろう。


俺は早く忘れてしまおうと首を振った。


――問題はこっちだ…。





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