神様のおもちゃ箱

そして、もう一度俺を見て、

「何で?」と聞いた。


「だって、井伏さんとか、大人の男だから」


いやみったらしかったんだ、多分、俺の言い方。

井伏の名前を出されて、由紀子さんは少しムッとした。


やっと忘れられてきただろうに。

俺は平気で今、傷をえぐってる。


それも悔しかったからだ。


由紀子さんは、俺を子ども扱いして言う。



「そんな事ないわよ」

「そんな事ある」

「ない」

「何ムキになってんの?」

「あのねぇ…!」

「未練たらたらじゃん」



すると由紀子さんはかぁっと顔を赤くした。
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