堕ちた天使
この時王様は、あえてレリエル様の力を借りませんでした。
愛する人を、自分の力で守りたいと思ったからです。

隣の国と交渉を続けましたが、状況は悪くなるばかりでした。
言い争いに疲れ、心が病んでしまった王様は、隣の国でひとりのお姫様と出会います。
心が荒んだ王様はレリエル様が居ながらも、そのお姫様と一晩を過ごし、関係を持ってしまいました。


神様は当然、全てをご覧になっていました。信頼していた王様に裏切られ、酷く怒りました。

神の怒りにより、空は荒れ狂い、災害が起き、戦争は悪化します。
国は滅び、大勢の人間が死に、世界は混乱に陥りました。

神様ははレリエル様にも責任があるとおっしゃいました。
そこで、レリエル様を天使の地位から堕としたのです。
堕天となったレリエル様にはもはや、なんの力も残されてはいません。

それでもレリエル様は、亡くなった人達を弔い、国を失いながらも、残った人達を支え、王様の帰りを待ち続けました。


しばらくして、かつての城に戻った王様は、変わり果てた姿でした。
心の闇は深く、美しかった顔も醜く歪んでしまっています。
誰もが王様に怯え、彼の元を去りました。

しかし、レリエル様だけは、王様の傍にあろうとしたのです。

醜く歪んだ自分と、輝きと純粋さを失わないレリエル様。
王様は、そんなレリエル様をうっとおしく思い、とうとう彼女を地下深くの牢屋に繋いでしまいました。


やがて、王様は息絶え、国も跡形も無くなり、世界はふたたび緑の地と化しました。


それから、何千年と過ぎ、文明が栄えては滅びました。
レリエル様のその後は誰も知りません。

それでも、今もどこか、かの城の跡地の地下深くには、レリエル様が眠っていると言われています。





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