18.44m
金属音。
バッティング練習か、守備練習の音だ。
ざわ、と身体の中で渦が生まれる。
速く野球がしたい。
マウンドに立って、ボールを投げたい。
気持ちが昂るにつれ、上履きの鳴る音が大きくなっていく。
『遥、部活行くぞ』
どくん。
思わず足を止めた。
キッ、と高い悲鳴が足元で生まれ、一瞬だけ余韻を残して消える。
自分のクラスの隣。
その後ろの出入口から、遥は中をのぞいた。
やはりそこには誰もいない。
列を整えて並べられた机には荷物もない。
複数の机が、青空からの光を受けて白く反射している。
目をこらしてみたが、そこに駿の姿はなかった。
当然だ、部活はとっくに始まっている。
野球が大好きなあいつが、この時間に教室に残っているはずがない。
あの声は、遥の気の所為だった。
県予選、最後の試合が脳裏を掠め、遥は慌てて追い払った。
大丈夫だ。
駿なら先に行って、準備万端で相棒を待ってくれている。
そうして遅れてきた相棒に文句を言いながらも、楽しそうに笑ってボールを渡す。
グラウンドの横にあるブルペンで、あのきちんと磨きこんだミットを構えて、遥の球を受けてくれる。
いつだってそうだ。
今日もそうに決まっている。
テスト明け、予選が終わってからの初練習で、ウズウズしている。
何を心配しているんだよ、おれは。
後頭部を軽く殴って、遥は荷物を取りに戻った。
自分に言い聞かせていることを分かっている自身に、気づかないフリをして。