苺なふたり




 もう、何も言わないでおこう、こんな能天気な男は放っておこうと決めて、目の前のショートケーキを食べる。

 甘いものが大好きな私。

 特にショートケーキには目がなくて、どんなお店に入っても、メニューにショートケーキがあれば迷わず注文している。

 ふわりとくちどけのいい生クリームにすっぽりと埋まっている苺の輝きに見とれながら。

「いただきまーす」

 小声で呟き、口に入れる。

 その甘酸っぱさに笑いが抑えられない。

 ケーキの上に一つだけ乗っている、まるまる苺。

 まず最初に食べるのがわたし流。

 美味しい物は一番最後にとっておく人も多いけれど、私は真っ先に食べる。

 大好物は、必ず最初に食べておく。

 そうでなければ誰かに取られて後悔することだってあるんだから。

「その苺、俺も狙ってたのに」
「ふふん、残念でしたー」

 目の前の功司のように、ケーキも苺も大好きだというようなオトコに狙われて、かっさらわれる可能性があるんだから、まず最初に食べておく。

 そして、あとはのんびりとスポンジのふわふわ感やお皿にデコレートされているベリーソースの味を堪能。

「おいしい」

 思わず口にしながら食べる私を見て、功司が苦笑しているけれど、どうでもいいんだ。

 とにかくおいしいんだから。




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