苺なふたり




「まあ、信吾だって、苦労して医者になったんだ、開業医になりたいと思わなくもないだろう。サラリーマン家庭に生まれたあいつが自分の力だけで開業できる可能性なんて低いんだから」
「なにその言い方。まるで信吾が亜季の実家の力に惹かれて結婚したみたいじゃない」
「ムキになるなよ。ほんと、信吾のことになると熱くなるんだから、おもしれー」

 おもしれー、なんて言いながら、私に体を寄せてよしよしと頭を撫でる。

 テーブル越しだとはいえ、その近すぎる距離感に照れくさくなる。

 それに、私を見つめる目だって、甘すぎだ。

「まあ、信吾は百花にとっては大切なおさななじみ。それも、自分の親友が心から愛している旦那様。行く末が気になってもおかしくはないよな?」

 嘘くさい笑顔を作って私の顔を覗き込む功司の額をペチンと手のひらで叩いた。

 すると、功司は叩いた私の手をあっという間につかみ、額を私の額にごつんと合わせる。

「いたっ。何するのよ」
「手で叩かれるより、額でごつんとやられた方が楽しいだろ?」
「……ばか?」
「ん?それも誉め言葉か?」

 面白そうに笑い、「ほんと、百花は飽きないねー」と呟く功司にため息をついた。




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