ある男子高校生の恋愛事情

二人で歩く


オレは左手で自転車を押して

右手には千夏の手があって


なんだかすごく

くすぐったい気持ちになる


ニヤニヤしてしまう



「ね、“あの道”行こうよ」

「んー、今日は混んでるし無理じゃないか?」



「いいから。とりあえず行ってみようよ」



――


「な。だから言ったろ」

境内よりは混んではいないけど
この中を自転車で突っ切るのは無理がある


「そこを何とかするのがドライバーでしょ」


いやいや、絶対に無理だって

旅人の服でラスボスくらい無理だって



「間違いなく人身事故が起こるよ」



ドーン


え??

「花火だ!!」


おお、すごくよく見える


「この場所、スポットだったんだね」

知らなかった


「あと、何発かな」

「千夏、そんな現実的な話をしないでよ」



へえ…本当によく見えるや



しばらく、眺めて

ふと、横を見れば千夏がいて

空はとてもカラフルで



この光景は

オレの記憶媒体に必ず残る



コピーしてみんなに見せたいくらいだ



祭りの最後に花火なんて

ありきたりで

よくあるパターン



ドラマや、映画、マンガでも

ありがちな王道パターン



でも、たまにはこんな

ベタな展開も悪くないじゃないか



だから、とことんベタになろうか



ギュッと千夏の手を握れば

また花火があがって

お決まりのセリフ「きれいだな」なんて

言ってみたりなんかして




いいじゃないか


夏の思い出にするには最高だと思わないか?



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