恋じゃなくてもイイですか?
その週の日曜日、早速、私はハルニレくんの住む家を見に向かった。
ハルニレくんの住む街は私の職場から近く、もしこの街に住むことを決めたなら、自転車通勤も可能な距離である。
都心からちょっと離れるけれど、古い物件(しかも風呂とトイレは共同)なので、家賃は破格。すごく、魅力的ではある。
最寄り駅の改札口で、ハルニレくんがやって来るのを待っている。待ち合わせの時間は13時、10分の遅刻だ。ぼんやりと飲み会での話を思い出していた。
「その家に住んでるのってハルニレくんだけなんでしょ?大丈夫なの?奏多と2人で暮らすのを薦めるなんて・・・」
ハルニレくんがトイレに立った隙に、結芽が桐生くんに耳打ちする。
「大丈夫だよ。寮の後ろにはハルニレのお爺ちゃんとお婆ちゃんが住んでるし」
「・・・でも、一緒の建物じゃないんでしょ?」
失恋したばかりの私にが(付き合っていない)男の人と一緒に住むなんて、言語道断だと結芽は思っているらしい。
「小出さん、ハルニレの噂、知らないの?」
桐生くんがふっと呆れたように笑う。肘をつき、右手で口元を触る仕草が絵になっている。さすがに王子様系イケメン(口を開いたら台無しだけど)と関係ないことが頭を過る。
「噂?」
結芽と私は顔を見合わせて、首を傾げる。噂?ハルニレくんに関する噂なんて、当時あっただろうか?グレープフルーツジュースのおかげで、すっかり酔いの醒めた頭で記憶を辿る。