Mein Schatz

再生


退院してからも相変わらずだらけた生活をしていた。



4月の温かい日、香織はとうとう家出した。


なんにもない場所に行きたい。知っている人なんていない所へ。



でも行く宛なんてなくて結局隣県のおばあちゃんの家に世話になった。


心配したおばあちゃんは静かに聞いた。

「香織ちゃん、どうしたの?」

「家に居たくなかったんだ」

「そう、なら香織ちゃんが気がすむまでここにいていいわよ」

そう言うとこれ以上多くを問いただすことはなかった。





おばあちゃんは早くにおじいちゃんを亡くしてからずっと都会外れの町で暮らしていた。


おばあちゃんの家は空気が綺麗で夜には星がはっきり見えた。都会の騒音もなく時間がゆっくり過ぎていった。


おばあちゃんは香織が薬を飲みたくない時は飲まなくていいと言った。夜眠れない時はずっと話をした。


お菓子作り、買い物、散歩。



家にいたら出来なかったことをたくさんした。香織の事情を知っているのかわからないがそれについては何も聞いてこなかった。



香織の自傷行為はなくなった。優しいおばあちゃんを悲しませたくなかったからだ。




香織が失っていた懐かしい感覚が蘇っていた。


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