擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「じゃあ、私、帰るけど、何か欲しい物があったら電話して来て?これ、私の番号だから」
テーブルに電話番号を書いたメモ用紙を置き、結城君の肩まで布団をかけてやると、虚ろな目が合った。
「帰んないで・・・」
どくん、と脈拍が大きく波打った。
風邪を引いて、弱り切っている結城君を見ていると、この言葉を振り払って帰るなんて私には到底できなかった。
「わかった。帰らないから、ちゃんと寝て?」
「ん・・・」
座り直すと、穏やかな顔で私を見つめてからゆっくりと目を閉じ、すぐに寝息を立て始めた。
さらさらした前髪が閉じた瞼にかかり、長い睫毛が影を落とす。
更に白くなった肌にぼんやりと頬が紅潮していた。
無防備に眠っている姿は可愛らしく、本当に綺麗な顔立ちをしているな、と嫉妬を覚える。
私の部屋とは間取りが反対の結城君の部屋はブラウン系でまとめられていて、私の部屋のように散らかり放題なんかじゃない。
本棚に立てかけられた参考書や問題集は、本の高さ順に並べられていて、結城君の几帳面さが窺える。
どうして、一人暮らしをしているんだろうか、と思った。
結城君の実家から高校まで通えない距離では無かったと聞く。
それに、結城君は両親に助けを求めなかったんだろうか?
こんな風になるまで、1人でじっとして、治るのをただ待つだけだったんだろうか。