【彼女のヒミツ】
「じゃあ、明日の朝九時。ここ中央図書館に集合。みんな遅れるなよ」中尾は語尾を裏声にして、茶目っ気たっぷりでいった。

繁華街から、中央図書館に戻ってきた四人は、明日の予定を決め解散した。

予定は、ほぼ中尾が独断で決めて、発表するような形だった。

礼二はこの日二万五千円ほど使った。

水着はパーセントオフの品物を買った。彼女らの些細な気遣いを感じる。

その後、中尾が食事に行こうと言い出し、モール内の韓国料理を食べた。

中尾が韓国料理が食べたいといって、彼女たちを引き連れ勝手に店内へ入ったのだ。

仕方なく礼二も付き合った。支払いの全ては、もちろん彼だ。

礼二は今、自転車で坂道を下ろうとしている。

いつも森永里子と出会うあの坂だ。今日は中尾に振り回された一日だった。

礼二がこんなに金を使ったのは生まれて初めてだ。

物欲やお洒落欲などが、あまりないからだ。明日も多分中尾に翻弄されるだろう。

ふいに水谷 玲の笑顔がよみがえる。

悪くない──彼は心で思ったことを、そのまま声に出した。

礼二はさっき発見したことがある。玲は微笑むと右頬にえくぼができるのだ。

坂道を下るときに受ける風が、とても気持ち良かった。

彼はすっかり暗くなった空を見上げた。

雲一つない暗闇は、大量の金銀をちりばめたような星々が、きらきらと瞬いていた。

< 29 / 63 >

この作品をシェア

pagetop