体育館12:25~それぞれのみる景色~

 だけど、最後に思うことは『俺だけの女になってほしい』って、それだけだった。


 このまま2人でずっと話していられたら、なんて妄想をして。


 舞い上がったのもつかの間だった。


 恭也が現れて、明らかに表情を変えた亜希を見て。


 女と滅多に話すことのない恭也が、冷たいと言われる恭也が、亜希に優しくしているのを見て。


 まずい、と。


 ただ、それだけを思った。


 でも、俺の思い込みかもしれないってポジティブに考えて、しばらくやり過ごして。


 亜希が本当に恭也を好きなこと、そして恭也が亜希を特別な想いで見ていることに気が付くのは、それからすぐのことだった。


 悔しかったし、なんでよりによってこいつらなんだと本気で怒りさえ覚えた。


 おまけに天然な亜希は、俺が恭也を好きだなんてバカなことぬかすし。


 俺が好きなのはお前だよって、何度言ってしまいたかったことか。


 それをできなかったのは、恭也と交わした約束と、俺がヘタレだったことが原因だ。


 恭也はどうやら、俺が亜希を好きなことを薄々と感じていたらしかった。


 恭也は何も言わなかったけど、恭也も亜希を好きだってことはなんとなくわかった。


 俺はバカで、セコイから、そんな恭也に持ちかけた。


 『卒業まで、お互い告白しない』なんて、相当バカげたことを。


 恭也はそれに無言でうなずいたから、亜希を好きだってことはそれで確信した。


 ……こんなアホくさい口約束も、別にいいだろうと思った。


 だって、コイツは亜希とすでに両想いで。


 俺はこの時点で完璧に敗者だったんだから。


 最低な俺の、少しの意地悪のつもりだった。


< 47 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop