体育館12:25~それぞれのみる景色~
だけど、最後に思うことは『俺だけの女になってほしい』って、それだけだった。
このまま2人でずっと話していられたら、なんて妄想をして。
舞い上がったのもつかの間だった。
恭也が現れて、明らかに表情を変えた亜希を見て。
女と滅多に話すことのない恭也が、冷たいと言われる恭也が、亜希に優しくしているのを見て。
まずい、と。
ただ、それだけを思った。
でも、俺の思い込みかもしれないってポジティブに考えて、しばらくやり過ごして。
亜希が本当に恭也を好きなこと、そして恭也が亜希を特別な想いで見ていることに気が付くのは、それからすぐのことだった。
悔しかったし、なんでよりによってこいつらなんだと本気で怒りさえ覚えた。
おまけに天然な亜希は、俺が恭也を好きだなんてバカなことぬかすし。
俺が好きなのはお前だよって、何度言ってしまいたかったことか。
それをできなかったのは、恭也と交わした約束と、俺がヘタレだったことが原因だ。
恭也はどうやら、俺が亜希を好きなことを薄々と感じていたらしかった。
恭也は何も言わなかったけど、恭也も亜希を好きだってことはなんとなくわかった。
俺はバカで、セコイから、そんな恭也に持ちかけた。
『卒業まで、お互い告白しない』なんて、相当バカげたことを。
恭也はそれに無言でうなずいたから、亜希を好きだってことはそれで確信した。
……こんなアホくさい口約束も、別にいいだろうと思った。
だって、コイツは亜希とすでに両想いで。
俺はこの時点で完璧に敗者だったんだから。
最低な俺の、少しの意地悪のつもりだった。