今さら恋なんて…
「お前はそういうのお客様の前で出さないからいいけど…」
店長はそう呟いてコーヒーをすすると、
「お前、中学生みたいなこと訊くなよ」
って、目元をくしゃくしゃにして笑った。
「中学生…」
「だって、そーだろ?同じ女を何年も口説く、なんて本気じゃなきゃ出来ねぇよ。ただのダチだと思ってるならそもそもからかうことはあっても、口説かねぇし」
「……」
「お前、ほいほい彼氏出来るクセに恋愛偏差値低いなぁ」
グサッ
「自分から好きになってないんだろ、毎回」
グサグサッ
「仕事に打ち込むのもいいけど…仕事仲間以外の人間関係も大事にしないと、いざとなったらひとりぼっちになるぞ?」
「……」
店長、シゲハルみたいなこと言ってる…とか思いながら、あたしはグサグサと矢が刺さった胸に手を当てて、こくん、と頷いた。