今さら恋なんて…



コツンコツン…


アスファルトにヒールの音が響く。


この前より、いくらかふくよかになった月が、その影を映し出している。


「ホントにいいの?送ってもらっちゃって…」

あたしは龍哉を見上げると、そう訊いた。


「いいですよ。さすがに1人で帰らせること出来ませんよ」

龍哉はそう言うと、白い息を纏わせながら微笑んだ。


もうすぐ、春になるけど…まだ夜は寒いから…頬がぴりぴりする。


「寒いですか?…カゼ、ひかないでくださいね」

龍哉はそう言うと、すっ、とあたしに近付いた。


「?…わっ…」

気付いた時には腰を絡め取られていて、ぐいっ、と龍哉の方に引き寄せられた。


「い、いやいやいや…」


「はい?」


「く、くっつきすぎだから…」


これがシゲハル相手だったら、突き飛ばすとか蹴り飛ばすとか出来たけど…さすがに龍哉相手じゃ、喚くことくらいしか出来ない。



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