我が家で毎日起きること*その2

シンクロニシティ

見ず知らずの他人と、思いがシンクロしたことはありますか?

私はあります。

この間、野菜の直売所に買い物に行ったんです。背中におーちゃんを、背負って。

端から順に、ぐるーっと見て回って。

直売所なので、直接作った人が棚に自分とこのを並べていたりするわけです。

ふと見ると、目の前にまさにそんな光景。
農家のおじちゃんが、何かをせっせとトレーから棚に並べていて。

横には、おばちゃん。

で、そこを通り抜けようとする私。

お店、そんなに広くないから、会話が丸聞こえで。

「で、これは何なの?」

フレンドリーっつーか、垣根の低いおばちゃんが、明らかに忙しそうなおじちゃんに話しかけている。

おばちゃんの興味の対象は、何やら短くカットされたゴボウ。

「これねー、長さの規格からはみ出た部分、端切れなんですよ」

「へー、美味しそう、ね??」

来たー!!
、おばちゃんの巻き込みトーク。

いや、私、ここ通り抜けてあっちのトマトのコーナーに行きたいんですけど?的な。

でもさー。

やっぱり日本人だから、そこは。ついね。

「ほんとー」

なんつって、相槌打っちゃうんですよ。

そしたら、おじちゃんも、

「ここはね、一番美味しいとこなんだ」

おばちゃん、ヒートアップ。

「えー!お得ね!しかも、短いからしまいやすいのね」

……しまう?あ、冷蔵庫か。

と、思いつつ、私の任務は終わったと思い、立ち去ろうとしたら、おばちゃんが、その短くカットされたゴボウ入りの袋を掴んで

「へーえ、いいわねほんと。しまいやすいもんね?」

と、私の顔を見てもう一回。

どんだけ欲しがるんだ、と思いつつ

「ですねー」

と答えたところ、おばちゃん、にっこり微笑んで、そのゴボウをおじちゃんのトレーに戻して、立ち去ったの!!!!

私ね、別にそのおじちゃんの肩持つわけじゃいけど、

「買わないんかーーーーーーーいっ!!!」

って、心の中で叫んだの。

多分、おじちゃんも同じタイミングで叫んだと思う。

作業している人の手を止めて。

通行人を巻き込んで。

褒め倒しておいて。

まさかのスルー。


……買いましたよ、私。

ゴボウの端切れ、10~15センチ、10本で100円。

安っっっ!

ただね、一回で使いきってしまったから、おばちゃんイチオシの「しまいやすさ」については未確認。
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