ゆとり社長を教育せよ。
12.忍び寄る危険


それから週が明けるまで、嫌がらせの電話は特になかった。

一人で家にこもっていると不安に押しつぶされそうで、充に全部打ち明けてしまおうかとも思った。

でも……今の彼は、新商品の開発に、きっと熱心に取り組んでるはず。

ただの悪戯かもしれないのに、余計な心配を掛けさせてしまうのは避けたい。

そんな思いから、結局彼に相談せず自分の胸の内をもやもやさせたまま、月曜日にはいつもどおり会社に出勤した。


ガチャ、と秘書室の扉を開くと、後輩の亜季ちゃんがいつものように皆のデスク周りを掃除している姿が目に入る。


「おはよう、今日も早いね」

「あ……おはようございます」


口では挨拶をしつつも、何故か私と目を合わせようとしない亜季ちゃん。

……どうしたんだろう?


「なにか、困ったことでもあった?」

「……いえ。別に」


亜季ちゃんの側まで行って聞くと、彼女はまるで私を避けるように秘書室から出て行ってしまった。

なんだろう……私、仕事で何か彼女に迷惑をかけてしまったりした?

そんな覚え、ないんだけどな……


腑に落ちない物を感じながらも、社長の判が必要な書類を手に、私も秘書室を後にしてエレベーターに乗り込む。

……充はもう来てるだろうか。付き合うことにしてから会社で顔を合わせるのは初めてだから、ちょっと緊張する。

でも、公私混同はナシにしなくちゃ。

仕事は仕事。とりあえず、今日はこの書類全部に判をもらって、お昼には取引先と会食の予定。それから……

今日の社長のスケジュールを脳内で確認していると、エレベーターはすぐに社長室のある階に到着した。

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