ゆとり社長を教育せよ。


悶々としながら彼に引っ張られ、校舎内を進んでいくと、充はある場所でぴたりと足を止めた。

……とはいっても特に何かがあるわけじゃない。

求人のチラシや、サークル勧誘のポスターが無造作に壁に貼られた、廊下の真ん中だ。


そこで私の手を離し、こちらを振り返った充は、ゴホンとわざとらしく咳払いをすると、こう言った。



「お姉さん、俺と一緒にダンスパーティーに出てくれない?」



ダンス……? 何を突然そんな脈絡のないことを……


「……急にどうしたの?」

「俺、ずっとパートナーを探してたんですけど、たった今、お姉さんに運命感じちゃったなーって。ちなみに、何学部ですか?」

「いや、意味不明なんだけど……それに何学部って、ふざけるのもいい加減に―――――――あ」


バカみたいに口を開けて固まった私は、震える指で充の顔を指さす。

デジャブ……っていうか、私、全く同じ体験をしたことがある。

必死に手繰り寄せた記憶の中にいる男子学生は、目の前にいる恋人にそっくり。


「……やっと気づいた? あのときのお姉さん」


にんまり口角を上げたその笑顔の意味は、私の予想が正しいことを意味してるんだろう。

ま、まさか、あのチャラい学生は、充――――!?


「あのときからずーっと片想いしてたんだもんなー。俺って超一途」

「う、うそ……だって何年前の話よ?」

「嘘じゃないよ? ちなみに職員棟でぶつかったのも俺。あんときの美也の泣き顔、まだ忘れてないし」

「わ、忘れなさい! 今すぐ!」


……なんてこと。

でもそっか。だから知ってたんだ。教授とのこと……!


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