コイアメ、コイトモ

コイブミ~とある名門の末っ子の噺~

僕には、大好きな人がいる。

名前を、東条奏。

そうだ、少し訂正をしなくちゃ。〈大好きな人〉を撤回して〈愛している人〉にしよう。

彼女は町の団子屋の娘。

僕は名門鴻上家の末っ子。……末っ子だから、彼女を好きになっても問題はないよね。

今日、恋文を渡した。

結果。


―――ずっと一緒にいてくださいね


彼女も僕のことが好きだそうなんだ。考えるだけで頬がゆがむよ。

惚気すぎだって?いいじゃないか兄さん。

兄さんにだって、佳香さんっていう素敵な人がいるんでしょ?……否、別にとらないよ。だからそんな顔しないで。

奏ちゃん?うん、可愛いよ?

そこが惚気すぎって……兄さんも佳香さんが綺麗だとかなんだとか言ってたじゃないか!!それとおんなじだよ!!

覚えてないって………自分に都合の良い方にしかもってってなじゃん。はあ。


うん、取り敢えずそういうことだから。

え?勿論。大事にするよ?

心配って……そこまで僕は落ちぶれてないよ。まったく。


それじゃあ、僕はもう寝るよ。おやすみ、兄さん。

……兄さん?どうしたんだよ?ねえ。

兄さん?!



霧の濃い夜だった。
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