私んちの婚約者
愛情、婚約者
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高宮の家に着き、愁也が釣りはいらないとタクシーから私を性急に引きずり出した。
そのまま無言で玄関のドアを蹴り開けるようにして中に入る。

タクシーの中ではずっと手を握っていてくれたけど、なんだかどんどん無口になっちゃった愁也。しかもこの様子。
いつになく乱暴だなあ。ど、どうしたんだろう。

私も続いて玄関に一歩足を踏み入れた、瞬間、

「しゅ、うひゃあっ!?」

彼を呼びかけて、いきなり腕を引かれ、名前が奇声に変わる。
愁也が私の唇を奪うようにキスをしたから。

「ん、ふっ……!」

「梓、口開けろ」

(ぎゃあああっ!)

熱をこめて囁かれた。
こ、これ、俺様モードの愁也だ……っ!

今までにないくらい激しいキスに、私は苦しくなって。

「愁也、ギブ、ギブアップ……!」

なんとか言葉を絞り出して、愁也の腕をバシバシ叩いてしまう。
けれど彼からのキスは、角度を変えて、何度も何度も繰り返される。

「ちょっ、しゅ、や」

腕を掴まれて、腰を抱き寄せられて。
彼のキスが私を絡めとる。

「ま、って……て」

聞いてない!
聞こえてない!
息が、出来ない……って!!

ーーマジで死ぬわ!!


「待たんかああっ!!!」


ゴイン、とイイ音が響き渡った。
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