私んちの婚約者
「……梓、痛い」


愁也が額を押さえて呻く。
頭突きを食らわせた私も同じく。

うるさい!こっちだってなんだか色んな意味で大ダメージだ!!

「がっつくな、馬鹿っ!ここ、玄関!!」

足元に向けて指を指して叱れば、彼は意外そうに言った。

「玄関じゃなきゃいいの?じゃあ俺の部屋行こう」

へ!?

愁也はそのままひょいっと私を抱き上げて、自室へと足を向ける。

……わーお姫様抱っこだ~
……とか言ってる場合じゃないな、これは。


「あのぉ、愁也さん?ちょーっと落ち着いてみようか……?」

おずおずと言ってみれば、愁也は私を見つめて。

「俺がどれだけ我慢したと思ってんの?もう待てない。梓」

おもわず、絶句。

愁也が、こ、壊れたっ……!


「あの、愁也さん?もしもし?ええとお、先にご飯食べない?私あそこでろくに食べてなくてね?」

「あんなのより良いモノ、食わせてやるよ」

それは!それは俺ってオチですか!だよね!
反対に喰われそうな飢えた目で見られて、けれどその奥で切なげに揺れる光に気づいて。
私はつい頷いてしまった。


部屋に入ると彼は私をベッドに降ろす。
スーツの上着を乱暴に脱ぎすてて、かっちりと締められていたネクタイを片手でグイッと引いて緩めた。そのままシュルッと引き抜く。その一連の動作に滲み出る、色気ハンパない。

ヤバいヤバい、何だかものすっごく身の危険を感じますが!

そうして愁也は私へと覆い被さると、またもや見事な手さばきで、あっという間に私のドレスのファスナーを下ろしてしまった。
私ですら着方がわからなかった超高級ドレスなのに!!くぅっ……相変わらずの凄腕だな!

あの、もしもし?
恋の続きとやらを教えるのは私じゃないわけ?
完全に愁也ペースですが。


「……愁也?」
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