私んちの婚約者
ドレスが肩から落とされて、何もなくなった素肌に、愁也の唇が触れる。

「……愁也」

思わずビクン、と背中がしなった。
愁也の声が、私の耳元をかすめる。

「梓がそんな俺を煽る格好をしてるからだろ?」

なんだそれ。私のせいですか。
いいがかりだ。
濡れ衣だ。
冤罪だ。

もうマトモに考えられない。

「綺麗にしちゃって。また透也に迫られたりしてないだろうな?」

「してないもんっ!!」

……真っ赤な顔で唖然とはされましたが。

どうせヒーロー戦隊並みの変身っぷりさ!!
く、『正体は謎』ってことにしといてよ、恥ずかしい!!
梓レッドは脳内の平和を守るのに精一杯よ!!

「何せ神前会長にまで口説かれたもんな?」

「それは愁也にちらつかせるための、にんじん扱いされただけでしょ!って……!!ちょっと」

そんな会話中も、彼の手も唇も止まることなく私を辿っていく。
さっきまでの性急さなんて嘘みたいに、ゆっくりと、優しく触れる指。

「がっついてたクセに、焦らすとか、マジムカつくっ……」

私は悔し紛れに呟いた。

どうしていいか
わからなくなるよ。

「仕方ないだろ。愛情込めてますから」

愁也がふ、と微笑んだ。



「梓……好きだよ」



「!

反則だあ、馬鹿っ……」


愁也の言葉が嬉しくて、涙が零れた。


熱くて、熱くて、どうにかなりそう。
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