私んちの婚約者
**
「まだ……食べるぅ」


自分の呟きで、目が覚めた。
白い天井が目に入る。

ーー私達が宿泊してるホテル。
窓から外の灯りがかすかに差し込むだけの、暗い部屋。


……。

……。


また、やっちまいましたか。

恥ずかしさと、情けなさで私はジタバタ暴れてみた。
ベッドの周りには私の服が散らばってるし、眠る前に感じていた、愁也の体温を覚えてる。

肌に残る痕も。
優しいキスも。

「わ、私ってば、……はしたない」

マキに大和撫子を説けないじゃん。

しかし、愁也はドコ?

いつもなら隣で眠る彼が居ない。
身体にシーツを巻きつけて、ベッドを降りて。ふと隣の部屋から灯りが漏れていることに気付く。
寝室から続く部屋の扉を開けようとしたなら、愁也の声がした。


「……エリカ……」


ーーまた、あの名前。

そっと扉を開ければ、携帯で電話をしている愁也。
時計を見れば、パーティーから数時間、今は夜中だ。


「どう、して」


1日に何度も、しかもこんな時間に電話する相手。
知らない女性の名前。
嬉しそうに、楽しそうに話す、愁也。


……知らない。

こんな、彼は知らない。
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