私んちの婚約者
秘密、婚約者
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愁也に連れられて行ったのは、私とレオがデートを目撃したあの店だった。
キラキラと素敵なショーウィンドウの向こうに、美しいドレスとアクセサリーが並んでいる。
彼が私の手を掴んだまま、顎で店の看板を差した。

「この店名、見覚えない?」

“G・E”



「お土産、やっただろ」

ふと、左手に目をやる。
そこに光る婚約指輪。

ああ、確か、これが入ってたリングケースに刻印されてた……?

「ここ、この指輪を買ったお店なの?」

聞けば、愁也が頷く。

「友人に紹介してもらった、凄く良いデザイナーでさ。婚約指輪を買った後、もう一つオーダーを頼んだんだ」

扉を開けて中に入る。


ーー店の中には、あの黒髪美女が居た。

「エリカ」

愁也が彼女に声をかける。

やっぱり、彼女がエリカなんだ……。

俯きかけた私に、愁也は言った。

「落ち込むのは早いんじゃない?」

へ?

彼に連れられた私を見て、エリカは顔いっぱいに微笑む。

「シューヤ!やっと連れて来てくれたのね?これで完成するわ」

完成?

ていうか、日本語だ、日本語。普通にさらりと話してる。
エリカって日本人でもイタリア人でもどっちでもある名前だから、てっきりイタリア人だと思っていたけど……違うのかな?
見た目は完璧イタリア美女なんだけどな。

「アズサよね?来て」

エリカは私の手を引いて、二階に上がって行く。
後ろから着いてくる愁也を見ても、彼は黙って微笑んでいるばかり。


階段を上がりきると、そこは作業部屋兼試着室のようだった。
沢山のアクセサリーだの布が所狭しとならんでる。

「ねぇ、愁也……」

「まだ。質問は後ほど」

愁也はなんだか悪戯を考えてる子供みたいに笑った。

な、何なの?
なんかすごく落ち着かない気分だよぉ。

エリカは構わずに進んで、一番奥にあったトルソーにかかった布を掴む。


「待ってたわ、アズサ」


一気に、引き抜いた。
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