私んちの婚約者
チャペルに流れる、アヴェマリアの旋律。
パイプオルガンの重厚な音と、ヴァイオリンの響きに埋もれるように。
私はゆっくり歩き出す。


一番の親友、マキ。
複雑な顔をしてる透也。
やっと会えた、愁也の両親。
何でもわかってます、って顔した神谷さん。
いつのまにかその彼に寄り添ってる三崎さん。
また野生味を増したカイ兄。

それから、ここには居ないけれど、ついさっきした電話で、散々文句を言いながらもおめでとうを言ってくれたマリアとレオ。
「誰が祝うか」とか憎まれ口叩いてたけど、本当は愁也の両親に遠慮したらしい蓮也。
同じく気を遣いつつ、スッゴい額のご祝儀と溢れんばかりの花を贈ってくれたという神前会長。

皆に祝福されて。
私はまっすぐに進んで行く。


その先に立つ愁也がこちらを向いた。
髪を後ろに流すようにセットして、シルバーのタキシードにタイ、胸元には私のブーケと同じ、薔薇のブートニア。
ふ、と微笑みを浮かべる姿は。

……無駄に、格好いい。
無性に、格好いい。
てゆーか、鼻血出そうなほど、格好いい。

や、ヤバいんですけど。
花嫁の流血沙汰とか、嫌すぎる!!!

だ、だれかヘルプミー!
今すぐ叫びたい気持ちを必死で抑える。
ああ、なんか押し倒したくなるってゆー愁也の気持ちがよくわかるよぉお……!
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