私んちの婚約者
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盛大な披露宴を終えて。

「やっぱり、ここだよね」

私は愁也と、家の前に立っていた。

全部ここから始まって。
全部ここで色々あって。

父が連れてきた態度の悪いイケメン婚約者は、私のかけがえのない人になった。

「ここはやっぱり王道でいく?」

愁也が笑って言って、私を抱き上げた。

「ほえ!?な、なに?」

「新婚さんて言ったらお姫様抱っこでしょ」


は、恥ずかしい!
……けど、悪くないかも?
ああ~。愁也病、もう不治だわ。

そのまま愁也は家の中へと入って行って、彼の部屋へ。
……正しくは、彼のベッドへ。

そこで私の身体を降ろすと、愁也はあの色気たっぷりの微笑みをくれて。

「約束通り、何でも言うこと聞くよ。梓のお願いって何?」

甘く囁くように聞くから、

「殴り倒しても、頭突きしても、ずっと一緒にいてね」

って返してみた。

「……今後もやる予定なんだ……」

愁也はちょっと顔をひきつらせたけれど、結局は苦笑して頷いた。


「じゃあ俺のお願いも聞いてくれる?」


あ、やっぱりか。
……この至近距離で、逆らえるはずもない。ずるい!!


「……なに?」

「色仕掛けで、俺を落としてみせろよ。

……いつもみたいに」


もう何度落とされたのか、落としたのかわからないけど。


「ずっとずっと傍で、恋に落としてあげる」


微笑み合って。

瞳を閉じて。

指を絡ませて。

甘いキス。


「愛してる、梓」

熱をこめて、囁いて。

「私も、愛してる。愁也」


そうして、


私んちの婚約者は

私んちの旦那様になった――。
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