私んちの婚約者
***

「ねー、愁也。これどーすんの?つうか、ナニコレ」

私、高宮梓(たかみやあずさ)。

毒舌と、ちょっぴり喧嘩っ早いのがチャームポイントな、20歳の女子大生。

(それちっとも長所じゃないとか言ったの誰ですか!)

「ああ、アンタのとこにいってたか」

私の持ってた箱を取り上げたのは、無駄にイケメンな青年。
父の会社の超有能社員、天野愁也(あまのしゅうや)、25歳。

彼は、ある日父が連れてきた私の“婚約者”ーーで。
ムカつく相手だったはずなのに、何故か私達は恋に落ちて。
遠回りしながら、やっと本当の婚約者らしくなってきたとこ。

「ああっ、梓!アンタまた勝手にお取り寄せグルメしたな!冷蔵庫に入りきらないからやめろっていっただろ」

「今回は冷凍モノだもんっ!愁也のケチ!」

……婚約者らしく、なって……?
……る、よね?


「いいじゃん、別に。全部ちゃーんと食べるもん」

「全部ペロッと食べちゃうからこそ、止めてるんですけどね……」

愁也がげんなりと呟く。
ぷいっと顔を背けた拍子に、私の腕が愁也の持っていた箱に当たって。

箱がドサリと床に落ちた。

「あ、ごめん」

慌てて手を伸ばし掛けて、私は凍り付く。


蓋の開いた隙間から覗いたのは、愁也と女の子が写った写真。
それから明らかに女性から貰ったらしき、ピンクや水色の明るくて綺麗な手紙の束。

ふり仰げば、“しまった”って顔して私を見る、彼の姿があって。

「あー……あのな、梓」

「う、……」

「“う”?」

「ううう、浮気ボックスか、この野郎ー!!!
この大馬鹿者ぉおおーー!!!」


……ってなわけで、冒頭に至る。
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