私んちの婚約者
愁也と二人、カフェを出て中庭へ向かう。
マキは透也に誘われて、デートだそうで。

意外にも透也はふっきると攻める派みたい。
草食系かと思ってたけど、騙されたなあ。

マキちゃんを奪られた私は、八つ当たり気味に愁也に絡んでいた。


「まったく!羞恥心てものを持とうよ、少しは!」

私はふん、と顎をあげて言う。

「梓は手加減てものを知ろうね」

愁也は額をさすりながら呟く。
ちなみにそこは先程、私が頭突きをかましたトコロ。


「ねぇ本当に俺のこと好きなの?たまに疑問に思うんだけど」

横目で見てくる愁也に、さすがにやりすぎたかと反省して。


「うん、あの……ちゃんと好き、だよ?」

小さく小さく、言ってみた。


けれど愁也様はお気に召さなかった様子。

「聞こえない」

「は、恥ずかしいよ」

うぅ、私は愁也の分まで羞恥心を持ち合わせてるんだい!

「聞こえなーい」

く、どこまでドSなんだ、この男は……!


仕方ない、必殺技だ!

私はあたりを見回した。

目視確認!射程圏内に人影無し!
よし!誰も居ない!

愁也の襟元を引っ張って屈ませる。
もう毎度お馴染みの、色仕掛け。
まだちゃんと、有効なハズ。

……が。

チュ、と触れるだけのキスには到底満足してくれなかった旦那様は、すかさず私の腰を抱き寄せて深く唇を重ねてくる。
しまった、油断した!


「んむ――んっ!?」

「相変わらず可愛いな、アンタは」

こら、どこへやった、羞恥心――!
今すぐ拾ってこい!


それぞれの思惑で夢中になっていた私達は、
そんな姿をじっと見られてたなんて、思いもよらなかった――
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