私んちの婚約者


梓、すーぱーピンチです。


えーと。
なんなの?この状況は。

「高宮さん。僕たちみんな、君のファンなんだ」

え~と。
ファンて、つまり私に好意を持っているということよね?

「アンタらは好きな相手を取り囲んで、集団で迫るわけ?」

残り少ない授業を真面目に受けに来たってのに。
なぜか私は知らない男子達に呼び止められて、裏庭で囲まれていた。
6〜7人はいるんじゃなかろうか。
いつもならここも人通りが全く無いわけじゃないんだけど、こんな人数で壁を作られていたら、私がここに居るとは気付かないかもしれない。

う~ん。
どうしたもんか。

私はさりげなくバッグの中を探って、愁也が無理矢理持たせた“御守り”を掴む。
スタンガンに催涙スプレー、防犯ブザー。何故か虫除けスプレー。
各種取り揃えてますが。

「……ホントに海外暮らし舐めんなよ」

とりあえず最初に仕掛けてきたやつに、電撃をお見舞いしちゃる。
ぐ、と掴んだ手をバッグから出そうとしたら、後ろにいた男に腕を掴まれた。

「梓ちゃんの攻撃力の高さは有名だからね」

「は~な~せ~!!」

しまった!!
そしてあんたは誰よ!?
知らない男に“梓ちゃん”呼ばわりされる筋合いは無い!

振り返ろうとした私は、その瞬間にお腹に鋭い痛みを感じた。


「……っ!!」


こいつ、乙女の腹、殴りやがったな!
絶対後で倍返し!!


文句が頭のなかをグルグルまわったけれど、それが口から飛び出す前に、私は意識を失った……。
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