私んちの婚約者
……。


「ほえ?」

あ、変な声出た。


好き?

って、誰が。私が?愁也を?


「違うもん……愁也さんだって私のこと興味ないし」



神谷さんはクス、と笑う。


「……そうですかね?

なら、私にしませんか」


ん?
今の空耳?


ものすっごく奇妙な単語が聴こえた気がして、思わず彼を見上げた。

「か、神谷さん?」

にっこりと、彼が笑う。
本音のつかめない、その笑顔。


あ、なんだ『社交辞令』か。


「本気ですよ」


口から漏れてしまっていたらしい私の言葉に、彼は反論した。


もしや、まさかの、

「か、神谷さん、確か32歳でしたよね。ロリっ気アリ?」

私とは年齢がひとまわり違う。

「ハタチ超えた女性相手なら、ロリコンではないでしょう」


そ、そうなるの?


「私、バカだし、凶暴だし、意地っ張りだし」


自分で言ってて情けないぞ、私。
こういうときは、むしろアピールだよね、欠点のリストアップをしてどうする!

「神谷さんは仕事もできるし、優しいし、誠実そうだし、結構な男前だからきっとモテるでしょう!?」

「……ええまあ否定はしませんが。けれど天野ほど熱狂的な人気はありませんし、忙しかったのでしばらく彼女もいません。だからお買い得ですよ、どうです?」


……そ、そうなの?そうなるの?



だけど、なんか、


なんか。
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