私んちの婚約者
危険思想のマリアは放っておいて。


「愁也、私も行ーきーたーいっ!!」

頼んでも首を横に振る愁也。


「ダメ」


なんで?



愁也の隣には、勝ち誇った顔で私を見るマリアがいた。


どす黒い感情が、心を支配する。


「あっそ!!」


「梓」

愁也が私を呼ぶのを無視して、苛立ちのままに立ち上がった。

マリアのワガママは聞くのに、私のお願いは聞けないってか!!

全身で『私怒ってます』と怒りのオーラを発しながら、私は膨れた頬でリビングを出て自室に戻ろうと廊下へ出て、

「あう、携帯」

リビングに忘れてきた。


今更戻れない、格好悪い!
だけどこのイライラを、是非ともマキ恋愛大先生に相談しなきゃおさまりそうにない。

「む~」

仕方なく、まわれ右。現代っ子はえてして携帯依存症。仕方ない!

リビングへ足を踏み入れようとした、
私の前で。



「シューヤ、嬉しい。
一緒にイタリア帰るネ」



マリアが愁也の唇に、


ーーキスをした。
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