私んちの婚約者
そのまま部屋に閉じこもって早一時間。

結局携帯はリビングに置いたままだ。それもあるけど、何より痛恨のダメージを喰らった気分でマキにも電話できず、私はぼけ~っとしていた。


仕方ない、のはわかってる。愁也は悪くない。彼の立場なら私を止めなきゃならないのも。

ましてや相手は17歳の女の子だ。ムキになる私が悪い。

「……って悟れたら、そもそも喧嘩なんかしないも~ん……」


マリアの言うとおり、私はお子様だ。


だけど、譲れない。

キスだけは。




「梓、入るよ」



ノックも何も無く、いきなり扉の向こうから掛けられた声に、思わずビクンと背が跳ねた。
私が返事をする前に、ガチャリとドアを開けて愁也が入ってくる。

えぇ~。

「プライバシーの侵害……」

泣きはらした真っ赤な目なんて、見られたくないのに。

「梓にそんなもんはないだろ、アンタは全部俺のものなんだから」

それ怒るとこ?
喜ぶとこ?


「ありますよ!親しき仲にも礼儀ありという言葉がね!」

けれど彼は私の抗議なんて聞いてない。

「俺も全部梓のモノだから、お互い様」

ーーっ、そんな理屈が通用するか!


またしても俺様発言をかます愁也に、

……抱きついてみた。
< 73 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop