私んちの婚約者
彼の胸に顔を埋めて、背中に手を回せば、愁也はしっかりと私を抱き締め返してくれた。
なだめるような、ちょっと柔らかな声が頭の上から溢れてくる。

「ごめんな、梓。マリアはちょっと行き過ぎたところがあるし、心配だから日本で待ってろよ」

……それは蜂の巣うんぬんもあながち嘘ではないってことですかね……

迷ったものの、結局は小さく頷いた私の顔を覗き込んで、彼は囁いた。

「こっち向いて」

ああ、またそんな甘い声で、おねだりされたら。
私が逆らえないって、きっとわかってる。

上を向いた私の顎に手をかけた愁也を、軽く睨んだ。

「もうキスしないって言わなかった?」

「そんなの、無理」

彼が私に微笑んだ。


「俺仕様の
気持ち良いキス、

お前の専売特許だろ」


そうやって私を絡めとってしまうから。

私は結局愁也に勝てないんだ。
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