私んちの婚約者
出発する前の夜に、梓が口にした言葉。


『置いていかないで……』


確かに聞こえたのに、梓が軽く否定したから、気のせいかと思ってしまったけれど。


あの言葉が、
無意識の、本音だったら?


俺は、彼女を一人にして、本当に良かったのだろうか。
意地っ張りで強がる梓を、そのまま彼女だと、勝手に思い込んでーー。

もし、彼女の一番脆くて弱い部分に、俺が気付けなかったのなら……。


いまさら俺の心に、不安が沸き起こった。

そんな俺の様子に構わず、高宮社長は呑気に呟く。


「それにさあ……今の梓にサバイバル術なんて、もうヤンキーに鉄パイプ渡すようなもんだよねー」


アンタ、実の親だろう。


……良い親子関係は
無理だと思います。
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