私んちの婚約者
同時に力強い腕が私を抱き締める。


(とうとう幻聴が……嗅覚もヤバい……感触まで……)

あんまり会いたくて、起きたまま夢見ちゃってるんだろうか。
ん?イヤイヤ、いくらなんでもそこまで私はヤバくないよね。


(なら、これは、……現実なの?)



目を開ければ、カイ兄を私から引き剥がして彼を睨みつける、無駄に格好良い横顔。



ああ。



「……っ、
しゅ、うや?」



その瞳が、私を見下ろした。
彼が微笑む。

「ただいま、梓」

愁也。
愁也だ。
本物の。

私は半身をひねって彼に抱きついた。

「愁也あっ……」

逢いたかったよ。


無意識に涙が零れて、彼の腕に落ちた。

「よしよし、怖かったな」

愁也は冗談めかして、抱きついた私の頭を撫でる。
子供にするみたいなのに、今は全然気にならない。

夢じゃない。愁也が、私に触れてる。

私は一気に安堵して、その胸に抱き締められていた。


「……で?
随分と梓を脅かしてくれたようですが」

冷たい声を野獣に投げ掛けて、愁也がカイ兄を見た。

あ、あの。目が笑ってないですよ、……お兄さん?

「あなた梓の実の叔父じゃないんですか?」

彼が冷たい声でカイ兄に問い掛ける。

「正真正銘、そいつの叔父上様ですが?」

カイ兄も貼り付いたような、違和感ある笑顔を返す。
愁也の指がつ、と私の首筋を撫でた。


「実の叔父が姪に、キスマーク付けるんですか?」
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