私んちの婚約者
「で、俺の審査結果は?」

愁也がふ、と微笑んだ。
カイ兄がはん、と鼻で笑うのが聴こえる。

「俺の目の前で梓といちゃつきやがって、かっさらっていきやがって。高得点が出るとでも?」


そうして、カイ兄は声を張り上げた。

「梓、んなとこにいねぇでこっち来い」

あ、バレてましたね~。
イヤだなあ、この空気。

仕方なく私は言われた通り、リビングへと入る。

愁也が驚いたように私を見た。

「起きたの?寝言でピザがどうこう言ってたからまだ寝るかと」

あのね……。
愁也の中では、私は相当な食欲大魔神らしい……。まあ否定はしないけれども!

「ところで梓、今日は?」

愁也がこっちを見て聞いた。

あ。

「大学!!」

朝から騒いだり、あんなんこんなんして眠っちゃったりしてたから、もうお昼を過ぎてる。

忘れてたあ!!

「午後の講義は出なきゃ!」

今日は外部講師の特別講演なんだ。
出なきゃ単位貰えない!

「じゃあ送ってく。俺も出社するし」

愁也がカード型の車のキーを示して、立ち上がった。

さっきまで私が涙でグチャグチャにしてたはずの愁也のスーツは、いつの間にか、ピシッと新しいものに着替えてる。
に、似合うなあ、本当に。
ネクタイを締めて、大きな手に腕時計を嵌めて。

う~ん、完璧だ。

「梓、サンドイッチ買っといたから、車で食べろよ」

……完璧だ!!

慌てて支度をすると、カイ兄も家を出るとこだった。

「カイ兄出かけるの?」

「まあな」

あれ?なんかアッサリ。
私に絡むことなく、さっさと行ってしまう背中を見送って、首を傾げていると、愁也が私を呼んだ。

あ、大変だっ!

私は急いで愁也の車へ乗り込んだ。
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